退職届の書き方は?法律で決まることと、会社ごとに決まること

辞め方と選び方公開:2026年10月16日編集:しごとのてびき編集部
机の上で白い紙に書類を書いている手元のイメージ写真。白無地の封筒とペンが置かれている。

※画像はイメージです。書式や提出の手順は勤務先によって異なります。

退職届の書き方を調べると、文面・用紙・封筒まで細かく指定した記事が並びます。ただ法令で決まっているのは「いつまでに申し出るか」であって、書式ではありません。ここでは、民法627条・労働基準法・厚生労働省のモデル就業規則にあたって、法律で決まる部分と会社ごとに決まる部分を分けて整理します。

退職届・退職願・辞表の違い

まず前提として、退職届と退職願の違いを定めた法令の規定は、調べた範囲では見当たりませんでした。一般には、退職願は「辞めさせてほしい」というお願い、退職届は「辞めます」という通知と説明されますが、これは慣習上の使い分けです。

公的な文書で使われている語を見ると、厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)は第52条で「退職を願い出て会社が承認したとき、又は退職願を提出して  日を経過したとき」と、退職願という語を使っています。辞表は、役員や公務員が辞任するときに使われる言い方です。

実務上の結論。 名称より自分の会社の就業規則にどう書かれているかが優先されます。就業規則が「退職願」と定めているならその名称と様式に合わせるのが確実です。様式が指定されている会社も多いので、書き始める前に就業規則を確認してください。

法律で決まること——いつまでに出すか

期間の定めのない雇用(いわゆる正社員など)については、民法に規定があります。民法第627条第1項は「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」と定めています。

モデル就業規則の解説も、同じ内容をこう説明しています。「期間の定めのない雇用の場合、労働者はいつでも退職を申し出ることができます。また、会社の承認がなくても、民法…の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります(民法第627条第1項)。」

項目根拠と内容
申し出の時期民法627条1項:いつでも解約の申入れができる
終了する時期民法627条1項:申入れの日から2週間の経過で終了
会社の承認モデル就業規則の解説:承認がなくても原則14日の経過で退職となる

※期間を定めて雇用されている場合(有期契約)は扱いが異なります。モデル就業規則第52条も、有期契約については「その期間を満了したとき」を退職の事由として別に挙げています。有期契約の途中で辞めたい場合は、契約内容を確認したうえで、労働基準監督署や労働局の相談窓口などで個別に確認してください。

会社ごとに決まること——就業規則の日数

注目したいのは、モデル就業規則第52条の書き方です。「退職願を提出して  日を経過したとき」と、日数の部分が空欄のままになっています。これは国が日数を指定しているのではなく、会社ごとに就業規則で定めるという形だからです。

そのため「1か月前まで」「2か月前まで」といった社内ルールは、会社によって違います。まず就業規則を見て、自分の会社がどの日数を定めているかを確認するのが出発点です。

※就業規則の日数と民法の2週間が食い違う場合の扱いは、個別の事情によって判断が分かれます。この記事では、どちらが優先されると言い切る書き方はしていません。実際にもめている・もめそうな場合は、労働局の総合労働相談コーナーなどにご相談ください。

書式・手書き・テンプレート・封筒の決まり

ここが、調べていていちばん拍子抜けする部分かもしれません。退職届の文面・用紙・筆記具・封筒について定めた法令の規定は、調べた範囲では見当たりませんでした。モデル就業規則にも、様式の指定はありません。

つまり、手書きか印刷か、縦書きか横書きか、白封筒か二重封筒か——といった点は、法律の問題ではなく、会社の様式と社内の慣習の問題です。テンプレートを探す前に、次の順で確認すると迷いません。

どの形で出すにしても、「いつ申し出たか」が後から確認できる形にしておくことだけは意味があります。民法627条1項の2週間も、モデル就業規則の日数も、起点は申し出た日だからです。

出したあとに会社が行う手続き

退職の前後には、会社側の義務として法律に書かれている手続きがあります。退職届の書き方よりも、実際に困りやすいのはこちらです。

退職時等の証明

労働基準法第22条第1項は「労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由…について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。」と定めています。請求できる事項が決まっている点と、「前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。」という定めがある点が特徴です。

賃金や金品の返還

労働基準法第23条第1項は「使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、…労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。」としています。請求があったときは7日以内、という期限が明記されています。

有給休暇の扱い

残っている年次有給休暇をどうするかも、退職届と同時に考えることになります。労働基準法第39条第5項は「使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」と定めています。

この「他の時季に与える」という部分は、退職日が決まっていると行き先がなくなります。そのため、退職日と有給の消化はセットで相談するほうが整理しやすいという実務上の事情があります。残日数は給与明細や勤怠システムで確認できることが多いので、申し出の前に数えておくと話が早くなります。

書く前に決めておきたいこと

書式に法令の定めがない以上、退職届そのもので差がつく場面はあまりありません。実際に難しいのは、誰にいつ伝えるかのほうです。就業規則の日数、引き継ぎの期間、有給の残日数を並べてから退職日を決めると、書面は最後に形を整えるだけで済みます。伝える順番や切り出し方は、退職の伝え方にまとめています。

まとめ

退職届の書き方で法令が決めているのは、民法627条1項の「申入れから2週間で終了する」という点だけです。日数の上乗せは就業規則(モデル就業規則第52条も日数は空欄)、文面・用紙・封筒は会社の様式と慣習の範囲にあります。退職後は労働基準法22条の証明書と23条の7日以内の支払い・返還を請求できます。まず就業規則を開き、次に有給の残日数を数え、最後に書面を整える——この順番がいちばん迷いません。

※本記事は法令および厚生労働省の公開資料を編集部が整理したもので、個別の事案に対する法的助言ではありません。契約内容や事情によって扱いは変わります。実際に争いがある場合は、労働局の総合労働相談コーナーや弁護士などの専門家にご相談ください。

出典
  1. e-Gov法令検索「民法」第627条(2026-10-16確認)
  2. e-Gov法令検索「労働基準法」第22条・第23条・第39条(2026-10-16確認)
  3. 厚生労働省労働基準局監督課「モデル就業規則」(令和7年12月版)(2026-10-16確認)